今月の書評(婚活編)

婚活時代

『「婚活」時代』 の書評


婚活関係の書籍として、第一回を飾るのにふさわしいのは、やはりこの本でしょうか。

家族社会学者の山田昌弘さんと、少子化ジャーナリストの白河桃子さん共著の『「婚活」時代』です。

初版が2008年3月ということなので、約7年前なんですね。

もともと、「婚活」という言葉が最初に世に出たのは、2007年11月号の「AERA」なんだそうです。

そこから、この本が20万部以上のヒットをし、2008年と2009年に『新語・流行語大賞』にノーミネートされたのは、皆さんご存知の通りです。

 

さて、まだ読んだことがないという方の為に、少し内容をご紹介します。

就職と結婚というのは、多くの類似点があるということで、造語として誕生したのが、この「婚活」という言葉です。

結婚も昔は、多くの人が当たり前のようにしていたものでした。

しかし、1975年を節目にして、結婚市場に大きな変化が起きているのです。

それは、「非婚化」と「晩婚化」。

社会経済的な状況変化に伴い、結婚市場においても流動性が出てきて、男女の出会いにも大きな偏りが発生し、その結果として「婚活」なしでは多くの人が結婚できない状況になってきていると説きます。

そして、生涯一度も結婚しない人、結婚したいという気持ちがあるにも関わらず未婚のままという人が増えていく現象がこの先も続くとみられ、今の若い人の4人に1人は「生涯未婚(※1)」になるというデータがあるそうです。

※1・・・ 生涯未婚とは、50歳の時点で一度も結婚したことが無い人を指す。50歳迄に一度も結婚したことが無い人は、その先結婚する確率が統計上極めて低いことから。

通常の高校では、1クラスが40人前後だったと思います。

そう考えると、50歳時点に同窓会があったとして、クラスメートの4分の1は結婚歴が無いという状況です。

なかなか凄い状況だと思いませんか?

 

それにしても、「1975年より前は、どうして今ほど結婚することが難しく無かったのか?」という疑問が出てきます。

この本の中では、いくつかの要因が挙げられています。

簡単に言えば、

・職場が男性と女性が出会う場として、企業が半ば意識的に「集団見合いの場」の機能を果たしていた。

・出会いが少なかったので、選択に迷うことがあまりなかった。

・世の中の経済が右肩上がりだったので、結婚後のことはあまり心配しなくてもよかった。

ということです。

この前提が外的な要因で大きく崩れて、結婚の難易度が大きく上がったという訳ですね。

個人的に特に印象的なのは、2番目の「出会いの数」でしょうか。

世の中が、「恋愛至上主義」の方へと流れていくなかで、多くの人がそれについて行けていないということが、指摘されています。

元々日本人というのは、「奥ゆかしい」ということが美徳して評価されるように、恋愛に不向き・不慣れな人が多く、恋愛に向いた風土では無いのでしょう。

それがいきなり「恋愛市場」の中に放り投げられたものだから、うまく対応できずに非婚・晩婚となるのはある意味自明の理であると言えるのかもしれません。

そういったことを親に相談しようにも、親の世代とは状況が大きく異なるため、ちゃんとした相談相手にならないのですね。

逆に、自分達は結婚にそれほど苦労をしていないので、「うちの子が結婚できないのは、何か人間的な欠陥があるのではないだろうか?」と考える親御さんが出てくるのも、仕方がないことなのかもしれません。

 

では、現代の結婚において男性に求められるものは何でしょうか?

データから言えば、まず「経済力」。

続いて、「コミュニケーション力」ということになります。

「経済力に関しては、多くの女性が男性に求める最低年収と、実際に男性が貰っている平均年収とはかなりの乖離があることは、よくニュースでも見かけますね。

また、「コミュニケーション力」に関しても、上記の通り、もともと高く無い人が多い中で、女性の要求水準を満たせる絶対数が少ないようです。

日本はアメリカのように、パーティー文化が根付いている訳でもなく、オープンマインドでも無い訳で、男性から積極的に女性へアプローチすることが当たり前という下地が出来るのには、まだまだ時間が掛かりそうな気がします。

そして、それをうまく補っていたのが、「お見合い文化」だったように感じます。

しかし、「恋愛」をしてラブラブ状態で結婚するのが良し!という風潮があり、不自然に「自然な出逢い」を求める人が多いため、ますますの未婚化へ拍車がかかっているのではないでしょうか。

結婚への最短ルートを見つける方法としては、周りの意見に流されることなく、「今の自分の結婚像が本当に自分が求めたものかどうか?」ということを改めて問い直すことから始めるのが良いかもしれませんね。

 

この本の造りとしては、前半が社会の分析、未婚・非婚の要因分析となっており、後半は具体的な婚活方法について述べられています。

「四十歳からが結婚適齢期? 三十五歳からの婚活」

「成功する婚活」

といった章になっていますので、興味のある方は、是非一読してみては如何でしょうか。