今月の書評(婚活編)

普通のダンナ

「普通のダンナがなぜ見つからない?」の書評


「婚活関係」の本というと、大体が結婚相談所の仲人さんや、社会学者、場合によっては占い師さんが書いている場合が多いものです。

今回ご紹介のこの本を特徴づけている要因の一つとして、著者が元々、外資系金融機関に勤めていて、「経営戦略コンサルタント」という経歴の持ち主であることでしょう。

その後、かつての銀行の同期繋がりで、婚活ビジネスの業界に飛び込み、色々と気づいたことをまとめたのが、この本という訳です。

婚活業界一本でやってきた人が書いた本との違いとしては、著者がコンサル出身というだけあって、やたらと「数字の裏付け」を出してくることでしょうか。

その中から、案外一般の人が思い悩んでいることは、ほとんどの人に共通することであり、当然その解も同じものであると説明されています。

 

また、個人的に感じるのは、著者が男性ということもあり、かなり理論武装された内容となっています。

そのため、多くの女性にとっては理屈っぽい、もしくは共感できないと思われる箇所があるのではないかと感じますね。

実際、かなりシビアなことが書かれていますから、気の弱い人は読むに当たってある程度の覚悟が必要かと思います。(笑)

 

それでは、本文を見ていきます。

前半は他の婚活本と同じく、市場の現状分析から始まっています。

本のタイトルにもなっている「普通のダンナ」とは、どういった人でしょうか?

「会話力」、「経済力」、「身長」、「ファッションセンス」、「学歴」、「ルックス」…といった項目を積み重ねて、その平均値をすべてカバーしている人という定義で出した数字は、なんと「0.8%」。

「1000人中8人」です。

多くの女性が、「自分は高望みしているのではなく、ただ普通の相手でいいんです・・・」と言うのですが、「普通」を突き詰めていくと、大変希少な存在になるのですね。

実際にありがちな会話として言えば、

A子さん「B男さんは、いい人なんだけど、年収がもう少し・・・」

    「C男さんは、身長がもう少し高ければ・・・」

    「D男さんは、年収も学歴もいいんだけど、お話がつまらなくて・・・」等々。

そうやって男性を選んでいくと、1000人のうち、8人程度しか存在しないそうです。

確かに、ほとんど全ての項目で平均を超えているという男性も世の中にいますが、そちらを求めるとなると今度は熾烈な競争がある世界になりますよね。

「その競争を勝ち抜いていくだけのものを自分は持っているのか?」ということを問われると、自信が無いという女性は多いでしょう。

そのため、「普通の人」という無難な答えになっているのでしょうが、それが案外、普通でなかったりするという議論になっています。

 

単純に年収だけ見ても、「年収600万円以上の独身男性は、3.5%しかおらず、競争率は10倍以上」となっています。

夢の!?1000万円プレイヤーは、「30代前半の独身男性、年収1000万円以上は僅かに0.14%」。

まずはこういった現実を直視し、思考停止に陥らないようにしましょう!というのが、著者の一貫した考えです。

 

この本全般に言えることは、男性特有のビジネス感覚といいましょうか、一部皮肉とも取れる表現が少なくありません。

その裏側には、著者が婚活の最前線にいて、日々婚活の厳しさを肌で感じている人なので、啓蒙的な「男親の親心」とも言える思いやりも見え隠れするのも事実です。

しかし、自分が「妥協」と考えていることを、側から「それは”妥当”というんですよ!」なんて言われれば、素直に聞き入れることができる人も少ないでしょうね(苦笑)

 

そんな婚活市場の厳しさを延々と前半は書かれているのですが、後半は一転して、その中でも市場の歪(ひずみ)などを上手く見つけていくテクニックなども書かれています。

例えば、不動産市場などでは、流通市場がかなり効率化されていますから、あまりに市場価格から外れた値段で物件を売るのは難しい訳です。

しかし、婚活市場というのは、案外偏りがあるのですね。

もちろん、市場価値自体はそれほどバラツキがある訳ではないのですが、言ってみれば流通市場にちゃんと乗っていない閉鎖的な空間が存在するのです。

簡単に言えば、

・男女の比率が歪な業界や職場、職種。

ということになります。

その「ブルーオーシャン」を攻略することにより、自分の市場価値以上の相手をGETできる可能性があるとも説いています。

 

最後に、個人的に一番気になった部分は、「かつて出会うきっかけNo.1だったお見合いが、今では10分の1以下に!」というところでしょうか。

結婚相手と出会う場所というのは、昔から「職場」や「知り合いの紹介」が多かったのです。

でも、男女の比率や年齢層からそういったことが期待できない職場に所属する人の受け皿は、ちゃんとあったのです。

そう、「お見合い」です。

「お見合い」は貴重な社会インフラだったのですね。

しかし、「お見合い」が廃れてきた一因として、現代の若者はお見合いの先に恋愛を求め、恋愛感情をお見合いの段階で抱けないような相手とは、成婚に至らなくなったそうです。

つまり、現代の「お見合い」で成功するためには、ある程度のルックスや相手を退屈させないコミュニケーション力が問われるようになり、成婚までのハードルが高くなっているということです。

その結果、この「お見合い」で結婚する人の激減を、他の出会い方で補てんすることが出来ておらず、今に至るという訳です。

 

そういえば、他の仲人さんからも、同じことを聞かされた覚えがあります。

「お見合いっていうと、誰でも何とかなる!と思う人がいるけど、そんなことないよ。昔と違って、最初の出会いが”お見合い”という形なだけであって、実際そこからは恋愛と同じだよ!」と。

うーん、今の世の中、どんなルートであっても、「恋愛力」が必要なのですね。

まあ、結婚してからが本当のスタートという意味では、まともなコミュニケーションが取れない人は、結婚生活が長続きするはずもありません。

これまた昔と異なり、「離婚」のハードルが大きく下がり、世間体が悪いからと結婚にしがみつく人も少なくなりました。

たなぼた的なラッキーで結婚できることを期待するのではなく、やはり基礎体力と言える「コミュ力」をアップさせる努力は、長く安定した共同生活を望むのであれば、遅かれ早かれ必要なのでしょう。

話がそれましたが、婚活に悩んでいる方に対して、問題解決のヒントも数多く列挙されているので、「婚活市場について自分は知識不足かな!?」と思う女性には、お勧めできる一冊ではないかと思います。