今月の書評(婚活編)

いま20代女性は

「いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか」の書評


この本の初版が、「2009年8月20日」。

今から、約6年程前になります。
※なので、本文に出てくる「40代男性」というのは、現在の「46歳~56歳男性」を。
「20代女性」は、現在の「26歳~36歳女性」を思い描いた方が理解しやすいと思います。

 

当時話題になったニュースとして、女優の沢尻エリカさん(当時22歳)と、クリエーターの高城剛さん(当時44歳)の結婚があります。

同じ年には、ダウンタウンの松本人志さん(当時45歳)と、26歳の女性との結婚。

こうしたニュースを筆頭に、40代男性と20代女性との恋愛が珍しく無い時代背景があります。

 

2015年の今でも、「歳の差恋愛」というのは、ある意味市民権を獲得していると言える風潮がありますよね。

世界を見た場合にも、先進国ほど自由恋愛を楽しんでおり、一部の宗教色が強い地域の事例を除けば、歳の差結婚への理解が進んでいるように思います。

ちなみにこの本において、40代男性というのは、既婚・未婚両方とも含まれています。

なので、必然的に社会的に認められていない不倫関係に身を置く女性の話も多々出てきます。

 

では、どうして「40代男性」と「20代女性」は特に惹かれあう傾向があるのでしょうか?

 

それを理解するには、社会背景を理解する必要があるようです。

現代の恋愛において、大前提と言えるツールは、「携帯電話やメールといった情報端末」でしょう。

学生は勿論、社会人必携のアイテムとなり、クローズドな関係においては特にその効果を発揮してくれますね。

 

それを踏まえて上で、それぞれの世代を見ていきます。

20代女性ですが、第一に挙げられるのが、「恋愛に対する積極性」です。

恋愛至上主義の結晶とも言える世代で、行動に制約の多い10代とは異なり、自由度の高い恋愛が楽しめる年齢でもあります。

そんな20代女性の背中を押してくれたのは、インターネット、携帯電話、メール、アプリなどで、世代間を超えてコミュニケーションの幅が大きく広がりました。

携帯やメールの普及は、全ての世代にとって恋愛の幅を広げる便利なツールとなっていますが、その中でも特に元々他者とのコミュニケーションを取るのが好きな女性には、追い風となっています。

 

その一方、対照的なのが、同年代である20代男性です。

女性と異なり、恋愛自体に対して後ろ向きな傾向があるのです。

いわゆる「草食男子」と言われる層です。

右肩上がりの世代と異なり、就職にも収入にも自信の持てない人が多く、それが内向的な性格に拍車を掛けているという説もありますね。

「20代の肉食女子」VS「20代の草食男子」。

当然、この二組はかみ合わないため、20代の肉食女子は、同年代ではない需要と供給のあった年齢層に向かうこととなる訳です。

 

 

続いて、「若年層の性に対してのオープン化」が挙げられています。

若い世代に人気の雑誌などで、「セックスできれいになる」といった特集が組まれるようになり、女性にとってセックスがポジティブな視点で扱われることが多くなりました。

ドラマでも、性に対して積極的な女性を格好良く良く描いたりと、今までの日本人女性の美徳としての「奥ゆかしさ」よりも、若い人たちには魅力的に映ったのでしょう。

それが、今までタブーとして扱われてきた「人前で性的な経験を話す」ということも娯楽番組などで面白おかしく取り上げられ、恋愛に対しての敷居を大きく下げることに繋がったという面もあります。

この「恋愛への敷居」は、恋愛だけにとどまらず、「結婚」というものへの考え方も大きく変えてしまったと言います。

簡単に言えば、「恋愛が結婚に必ずしも繋がらなくてもいいんじゃない!?」という考え方です。

特に20代前半だと、出産のリミットなどのプレッシャーも感じないでしょうから、後先考えずに刹那的な快楽に身を任せてみるという判断をする人がいても不思議ではありませんよね。

 

そして、一方の40代男性を見てみましょう。

この世代の特徴は、多くの人がバブル世代に属し、成功体験や上昇志向などが身についているため、恋愛に対してもアグレッシブな人が多いのです。

30代は就職氷河期を過ごしていて、全体的に堅実な生き方を良しとする人が多いのですが、40代は対照的なイメージを与えます。

40代の若い頃は、モテることが男として大きな勲章というような社会背景があり、無理してでも「クルマ」や高価な時計を買うということがステータスだった時代なのです。

そのため、自然と遊び慣れている人も多く、女性へのエスコートも現在の20代、30代に比べて上手な人が多いのですね。

その一方で、精神的な脆さが出てくるのも、この世代の特徴だと言います。

「仕事」と「家庭」の両方で責任のある立場となり、安らぎの場を求める傾向が出てくる年代なのです。

「心のオアシス」を求める40代男性は、どこに安らぎを求めるのでしょうか?

 

 

以上が、大まかな時代背景ですが、お互いがくっつくには、やはり「共通点」が必要となります。

その最大の共通点は、

■「20代女性」と「40代女性」は他の世代に比べて、ストレスの多い世代である

 と著者は考えています。

お互いに趣味も多彩でアクティブな傾向があり、自分なりに理想を目指して努力しているものの、向上心の強さゆえになかなか思い通りにならず、もがき苦しむ人が多いのも双方の特徴なのです。

また、人生において著者が「壁期」と呼ぶ人生の大きな決断を迫られる年代が男女それぞれにあり、それが男性の場合「40代」、女性の場合「20代」となっていることもストレスを増やす要因であり、お互いが共感できる部分でもあるそうです。

 

40代男性のストレス解消方法で多いのは、「お酒を飲みに行く」というのが多く、「人に話を聞いて貰いたい」という人の割合はかなり少なくなります。

一方、20代女性の場合は、「人に話を聞いて貰いたい」という割合は高いのだそうです。

同じ20代の男性は「お酒を飲みに…」という人が減っており、そこへ40代男性の20代女性への「お酒でも飲みに行こうか?」というお誘いがあれば、恋愛に発展しやすいのは当然後者でしょうね。

一般的に、女性は「ファザコン」と自他ともに認識している人が多いことからも、そういった接触機会が恋愛に発展するのも、確率的に言っても十分にあり得ることなのでしょう。

 

ここまで読むと、「20代女性は、好んで40代男性を選んでいる」と思う人がいるかもしれませんが、それは事実ではないようです。

当の本人たちは、まったくそんな意識はなく、自分の欲している条件を満たしてくれた相手が、たまたま40代男性だっただけというケースが大半なのですね。

20代女性は、包容力のある尊敬できる男性に、自分をまるごと受けとめてほしい。

40代男性は、ストレスフルな毎日から解放されて、安らげる場所が欲しい。

この2つの需要を同世代の異性が満たせば一番良いのですが、残念ながら同世代はもちろん、中間の30代も育った時代の違いにより満たせていないのです。

そのため、20代女性と40代男性の需要と供給が合い、恋愛という形になっているだけなのだそうです。

 

 

ただ、この関係には大きな問題があります。

それは「時間軸」。

お互いが「永続的な関係」を求めていたのか、それとも「刹那的な関係」で満足していたのか。

お互いに独身であれば、まだ話はシンプルなのですが、男性が既婚、もしくは結婚する気が無い男性だった場合、ハッピーエンドを迎える可能性はかなり低くなります。

男性はともかく、女性の場合には、30歳手前で多くの友人が結婚していくことになり、その中で将来が見えない不毛な付き合いに大きな不満を感じることでしょう。

今まで楽しかった彼との関係もストレスにまみれたものになり、恋愛ホルモンの分泌も滞ってくることだってあり得ます。

その中で多くの女性は、「別れ」という選択肢を選ぶ人が多い訳です。

 

 

もう一つ、この本には書かれていませんでしたが、「20代女性と40代男性の恋愛が成就しづらい理由」があります。

これも「時間軸」なのですが、家庭を持ったとした場合の将来設計についてです。

「20代女性」と「40代男性」が結婚した場合、20代女性は同年代の女性に比べて経済的に裕福な環境にあることが多いでしょう。

彼の買ったマンションや戸建てに住み、同年代の男性では買えないような高級車に乗るようなことも可能かもしれません。

しかし、10年単位で将来を見た場合、

(現在)
私 25歳
彼 45歳

(10年後)
私 35歳
彼 55歳

(20年後)
私 45歳
彼 65歳

(30年後)
私 55歳
彼 75歳

となり、同年代のお友達が、「ようやく子供が成人して手を離れたから、夫婦旅行を楽しもうと思うの」と話をしている中、いち早く介護の心配が出てくることになります。

それなりに稼いでいる芸能人や資産家であれば、有料介護サービスなどにより負担は大きく減るでしょうが、一般のサラリーマンとかだと難しい場合が多いでしょう。

そのリアルな将来像が彼女の決断を鈍らせるのです。

 

しかしまあ、昔と違って、今では70歳、80歳でも元気な人は沢山います。

今後ますます医学が発達し、今の20代、30代の平均寿命は100歳を超えると予想している科学者もいます。

アンチエイジングの技術も急速に発達しており、60歳過ぎての出産というのも、現実味を帯びてきているそうです。

そうなると、もっと年齢差のある結婚というのが増えてきて、社会的に認知されるようになってくるかもしれませんね。