今月の書評(婚活編)

review20150601

「なぜ、その人に惹かれてしまうのか?」の書評 <その1>


今回紹介の本は、今までとは毛色の違った婚活の本です。

この本において、なによりもまずご紹介しなくてはいけないのは、著者についてでしょう。

名前は、森川友義 教授。

そう!教授なのです。

早稲田大学国際教養学部において教鞭をふるっている政治学博士なのです。

なぜ、政治博士が大学において「恋愛学」を教えているのか? についても途中理由を書かれていますが、ここでは割愛します。

それよりもこの本の特徴として、裏付けの理論に「生物学」「生理学」といったものが多々出てくることです。

「恋愛感情」とはつまるところ、女性の持つ卵子と男性の持つ精子とを引き合わせて子供を産ませるための情動であり、どんな女性でも、優秀な精子と結合したいと思い、男性も優秀な卵子と結合したいと願っている。

そんな主張が次々と出てきます。

そのため、巷にある「モテるメイク」とか、「モテる服」といった情報は、小手先のテクニックであり、それよりももっと本質的な部分を見ることにより、動物として異性を引き寄せるべき!というのが、この本における一貫した主張のように思います。

 

インターネットや雑誌でよく見かける恋愛テクニックというのは、結構、その著者の偏った経験に基づいた主張であることが多いものです。

そういったものは、単なる読み物としては面白いのですが、いざその記事を参考にして試したところ、痛い目にあった…という人も少なくないでしょう。

そういった意味では、人間の根源の部分をベースに婚活を解き明かしていく流れとなっており、世の中に沢山ある恋愛本とは一線を画していますね。

逆に言えば、「テストステロン」だの「エストロゲン」だの、一般の人が普段聞き慣れない単語が結構出てくるので、生物学的なアプローチを面白いと感じない人には、読んでいて苦痛に感じるかもしれません。

また、ここでの知識を酒の肴として、そのまま女性に披露しても、これまた食いつきが悪いかもしれませんね。

まあ、マジシャンがネタをばらすようなものなので、恋愛中にはあまりお話しない方が良い話でもありますが。。(苦笑)

 

ただ、「人を好きになるのは、無意識である」ということを理論的に説明できるようになるので、「どうすれば自分はモテるようになるのか?」という意味では、応用の利きやすい知識とも言える気がします。

 

では、本書の中身に入っていきます。

人が「モテたい」という願望を持つ理由としては、「出来る限り優秀な子孫を残したい」というDNAに刻まれた本能によるものだと言います。

鮭の受精などでも、メスは少しでも身体の大きなオスと交尾しようとします。

それは、自然界において身体の大きさは、生存率に直接関わってくる大事な要素だから。

それと同じようなことが、人間同士の場合、「五感」を通して選別が行われているのですね。

まず最初は「視覚」

ある程度距離があっても、相手を判断できるという能力は、恋人探しにおいて重要度は高いものです。

ただ、女性と男性とでは、異なる点が多々あるので、分けて書かれていますね。

 

 

(男性側の視点)男性がパートナー候補として女性を見る場合、何を基準に選択しているのでしょうか?

簡単に言えば、子孫を残すに当たって、健康で高い生殖力があり、しっかり子育てをしてくれそうな女性を選ぶのだそうです。

その具体的な選別基準は、体型であったり、左右対称な顔であったり、ウエストとヒップの比率であったりするそうですが、行き着くところはやはり生殖活動に繋がるのですね。

そういった意味では、男性が若い女性を好んだり、大きいバストやお尻に惹かれる人が多いのは、至って当たり前のことであり、本能なんだそうです。

 

では、女性がパートナー候補として男性を見る場合、どこを見ているのか?

女性が理想とする男性というのは、「狩猟が上手で、獲得した獲物を分け与えてくれ、母子を守ってくれる男性」ということになるそうです。

なので、大昔は男性に「体格・体力」が強く求められたというのは、すんなり理解できるでしょう。

そして、時代が流れる中で、貨幣の世の中になり、「経済的資源」がモノを言うようになりました。

もちろん、「体格・体力」というのも、大昔ほどではないにしろ、肉体的な逞しさは評価の基準として存在し、現代でもスポーツ選手がモテるというように、未だに色濃く残っているようです。

「高身長」がモテるというのも、狩猟時代の名残りなのかもしれませんね。

 

 

そして五感の2つ目は、「嗅覚」

自然界には、フェロモンなどを敏感にかぎ分けることができる動物が少なくないようですが、人間の場合はさほどでも無い気がしませんか?

しかし、「相手の体臭をどう感じるか?」 は、かなり重要なことだと著者は言います。

恋人同士になって、相手の体臭を心地よいと感知できないカップルは性交回数が少なく、男女ともに浮気に走りやすいという結果があったり、相手の体臭をクサイと感じる女性は、妊娠しづらく、流産の確率も高くなりやすいそうです。

それだけ体臭というのは大事なので、香水などはかえって恋愛の邪魔になるそうなので、控えた方が良いとのこと!

という訳で、簡単に言えば、「相手から、もし受け入れられない体臭やにおいを直感的に感じる場合には、遺伝子が、その相手はやめた方がいい!と警告をしている」と言えるそうです。

もちろん、これは日常生活で微かに漂っている体臭に対してのお話なので、喫煙や不衛生から出る匂いに関しては、その範囲ではないことも付け加えさせて頂きます。

あと、「加齢臭」もマイナスに働くようなので、一定年齢を超えたら特に匂いには気を付けた方が良さそうです。

なんだかんだ言っても、人間は無臭が良いようですね。

 

次に、五感の3つ目は、「聴覚」

一般的に良く知られているのは、「男性は高い声よりも低い声の方が、女性に好まれる」ということくらいでしょうか。

あとは、人それぞれの好みというような気がします。

実際には、声にも美醜があり、モテ度にかなり関係があるそうです。

でもそれより重要視されているのは、話をしているその中身。

言葉は分かりやすい自己表現であり、人間性をも垣間見させるものですから、当然と言えば当然。

そこにユーモアのセンスと音楽的な意味での耳障りの良い声の響きがあれば、女性との関係をより円滑にすることができるとのこと。

ただし、女性⇒男性へのユーモアは恋愛を基準とした場合には評価が低く、冗談の多い女性は、恋人というよりも友達になってしまう確率が上がるようなので、ノリの良さも控えめに。

 

五感の4つ目は、「味覚」

「味覚」と言っても、ピンと来ない人が多いのではないでしょうか。

私も、「味覚」からイメージできる話といえば、「女性は美味しいものを食べて気分が良い時には、同席している相手にも好感を持ちやすい」といったレベルのお話です。

この本の中では、「味覚」は「キス」に繋がるものでもあり、求愛される側としても「食事」を通して「味覚」を刺激されるというのは、ある種の指標になっていると言います。

つまり、女性は連れて行かれるお店によって、自分をどういった対象として男性が見ているのか?ということを判断しているそうです。

また、女性が男性に求める「母子の生存の保証」ということにも関係しているようで、男性がどの程度の獲物(料理)を自分に提供してくれるのか?できるのか?を見定めるのには、格好のシチュエーションになるのですね。やはり、デートのお店選びは重要なのです!

ただ、ここには女性から男性への一方的な評価だけでなく、男性から女性への品評会の意味もありますので、もし男性から2回目のデートのお誘いがなければ、つまり。。。そういうことになります。

話しを最初の「キス」に戻しまして、「キス」の重要度は、「体臭」の話と似ていて、生理的な相性の良さを確認できるものでもあります。

そして、体臭以上に相手の情報(恋愛経験など)が得られる所作であり、相性判断の重要な材料となるのですね。 

 

最後に、五感の「触覚」

触覚というと何だろうなという気がしますが、上記の順番でいえば、「相手を見て」、「相手の体臭をかいで」、「声を聞いて」、そして「舌(キス)」で確かめました。

なので、次に来るのは、五感の最終段階である「セックス」ということになります。

この話を続ける前に、男女の恋愛に求める大前提をおさらいした方が良いかもしれません。

男性にとっての理想の女性⇒ 健康で、自分の子供を沢山産んで、その子供を上手に育ててくれる女性。

女性にとっての理想の男性⇒ 食料獲得能力に優れていて、その獲得した物を十分に分け与えてくれ、母子を守ってくれるほどに優しい男性。

そして、この図式の中で、セックスは、

「女性にとっては関係の始まりだが、男性にとっては終わりの始まりである」という面があり、力関係が逆転しやすい瞬間であるとのことです。

それは、女性は妊娠した場合にはそこから長期にわたるリスクを背負い込むになるのに対して、男性は女性に精子を渡した段階で、生物的には一定の目的が完了となります。

さらに厄介なのは、女性が好む「社会的な成功者」ほどテストステロンの分泌が多い傾向があり、そういった人は一人の女性では満足できず浮気に走る確率も高いことです。

「モテる男性」≒「社会的な成功者」という図式が成り立ちやすい為、素敵な男性を求めるほど、結婚後の浮気リスクが高くなるというジレンマに女性は陥りやすいことを物語っていますね。

「英雄色を好む」は、本当なのです!

 

長くなってきたので、初の2部構成とさせて頂き、次回の<その2>に続きます。