私の友人カップルの話です。
つい最近結婚式を挙げた彼女たちですが、出会ってから結婚までに3年かかっています。
二人が最初に出会ったのは、婚活パーティーでのことでした。
都内で行われたパーティーで、彼の方はそれが初参加。
20代も後半に差し掛かり、早く結婚したいと婚活を頑張っていた彼女は3回目の参加だったそうです。
身内びいきかもしれませんが、彼女はとても美人です。スタイルも悪くないし、きちんとした仕事についています。
婚活パーティーに何度も参加していて、それでも結婚が決まっていないのは、彼女の方から出会った男性をお断りしていたからのようでした。
そんな彼女と彼はパーティーですぐに意気投合しました。
それは二人が映画という共通の趣味を持っていて、かつ好きな監督がことごとく同じだったからだそうです。
ちょうどその頃、その監督の新作が公開されたばかりだったこともあって、二人はすぐに最初のデートの日時を決めました。
そしてその後も順調に交際を続け、2か月ほどお付き合いしたそうですが、その後破局してしまったんです。
良い人だと聞いていたので、なぜ別れてしまったのかと彼女に尋ねると、「彼がオタクだった」と言われたんです。
初めて部屋へ招待されていってみたら、美少女フィギュアとアニメのDVDが大量にあって、鳥肌が立ってしまったということでした。
もちろん映画のポスターやDVDもたくさん置いてあったそうですが、オタクは気持ち悪い無理だという言葉が頭の中を回って気持ちが悪くなってしまい、それからお別れのメールを送ったということでした。
もったいないなと思ったんですよね。
彼女があんなに楽しそうにデートについて話してくれたことなんてこれまでなかったことでしたし、彼女の大好きな監督の映画に関する知識はマニアといっても良いほどでしたので、案外気が合うんじゃないの~なんて他人の私からは言ってみましたが、彼女はどうしても受け入れられなかったようでした。
それから半年後、彼女はフットサルが趣味だというがっちり体型のスポーツマンと婚約。
そろそろ結婚式の招待状が届くかしらと思っていたところで、彼女から入院しているとの連絡がありました。
結婚前なのになんてこと!と思ってかけつけると、顔がひどく腫れて脚の骨を折った痛々しい彼女の姿が……。交通事故にでもあったのかと驚いていると、なんと婚約者からの暴力でそうなったっていうんです。
あの時の怒りは言葉では言い表せないほどでした。
もちろんその後、二人は破談になり、彼女もしばらく結婚のことは考えたくないと話していました。
いつか彼女の心の傷が癒えるといいなと私も見守ることにしたんです。
ところが半年後、いつものように彼女を含めた友だちと一緒に食事をしていると、彼女から「お付き合いをしている人がいる」と言われました。
しかもそれがなんと、前に別れたオタクの彼だというんです。
何がどうしてそんなことに?となれそめを聞くと、脚の骨折が治るまでろくに外出もできなかった彼女は、なんとなく当時話題になっていたアニメ映画を一本レンタルしてみたそうです。
そうしたらそれが予想以上におもしろい。
つい同じ監督がつくった別のアニメを観てみたらそれも夢中になってみてしまった。
誰かにこの感動を話したいけど、アニメのことなんて私たちにも話せない……ということで元彼に連絡したそうです。
そこからしばらくは、ただアニメの感想を言い合うだけのお友だちだったそうですが、少し前に彼の方から改めて告白されて付き合うことになったと微笑みながら教えてくれました。
DV男のせいで彼女の傷は深く、結婚までには時間がかかりましたが、オタクの彼はすごく根気強く優しく待っていてくれたそうです。
受け入れられない彼の趣味だけに囚われて、彼の本質が見えていなかった私はバカだったと、彼女は後に私に話してくれました。
どうしても許せない趣味、どうしても受け入れられないものってあると思います。
結婚相手という一生を共にする相手なら尚更、できるだけ嫌な部分が無い人とお付き合いをしたいですよね。
でもどうせなら相手の嫌な点より良い点だけをよく見た方が幸せになれるのではないかなあと、私はこの話をきいて思いました。